Papa lapped a pap lopped

 聖域の中心に位置する、12人の黄金聖闘士によって守られる12宮。
 その第4の宮である巨蟹宮において、聖闘士が生活するスペースとして設けられている寝殿。その一角にある寝室には、濃密な空気が満ちていた。
「あ……あぁっ!」
「っ……ぅ、はぁ……」
 寝台の上には、長い黒髪が散らばっている。
 筋肉質ではあるが、白く細い腕がベッドのシーツを彷徨い、堪え切れないようにぎゅっとシーツを握る。
「あ、あ――っ!」
 高い声を挙げて、組み敷かれている長い黒髪の少年の体が痙攣する。
「まだまだイケるみてぇだな。ったく、どれだけ慣らされてんだよ、てめェ」
 彼に覆いかぶさって、彼を押さえつけ、思うままに貫いて揺さぶっている銀髪の男が、ニヤリと笑った。
「皮肉なモンだな。カラダの相性だけはいい、なんてよ」
 言いながら、男の肉棒が内壁の襞を擦る。
「っ!!」
 貫かれている少年は、強烈な刺激にのけぞった。
 反射的に中に入っている男の肉棒を締め付けて、男の顔も快楽に歪む。
 肉棒を根元まで深く突き入れた男の顔から、余裕が消えた。
「っくしょ……」
 男は少年の足を抱え直して、動きを速くした。

Papa lapped a pap lopped


 紫龍が双児宮から巨蟹宮へと続く階段を上がったのは、もうすっかり夜も更けた時間だった。聖域の入口近く、雑兵や白銀以下の聖闘士たちが暮らす居住区の隅にある図書館で読書をしているうちに、日が暮れて夜が深くなることも忘れていたのだ。
 明かりが点いていることを不審に思ったのか、見回り役の雑兵に声をかけられて、紫龍はようやく食事も忘れて読書に耽っていたことに気づいた。そして今自分が預かっている天秤宮へと戻ろうとして、12宮の階段を上がり始めた。
 第1の宮である白羊宮を通り抜けようとした時、そこを守護する牡羊座アリエスのムウに呼び止められた。紫龍が図書館へ下りて行ってから数時間、日が暮れても戻ってこないのを心配していたのだというムウに軽食を出してもらい、紫龍はようやく自覚した空腹を満たし、礼を言って天秤宮へと戻る階段を再び歩き出した。
 第2の宮である金牛宮を預かる牡羊座タウラスのアルデバランと、第3の宮である双児宮を預かる双子座ジェミニのサガに挨拶をして、紫龍は第4の宮である巨蟹宮へと向かった。
 聖域にある12宮は、神話の時代から女神アテナの小宇宙に満ちている。そのため、女神アテナの化身として生まれた少女はもちろんのこと、光速の動きを誇る黄金聖闘士といえども宮を越えてテレポートすることは叶わない。自分の足で、階段を1段ずつ上がって行くほかに移動手段はないのである。
 紫龍は今、師匠である天秤座ライブラの童虎の代理として天秤宮を預かっている。童虎が留守にしているというわけではない。教皇であるシオンのたっての願いで教皇補佐として教皇の間に詰めているために、師に乞われて預かることになったのである。
 天秤宮は12宮の7番目。
 そこへたどり着くには、嫌でも第4の宮・巨蟹宮を通らねばならなかった。

 巨蟹宮には、紫龍は最も嫌っている男がいる。

 いや、最も嫌っているというのは多少語弊がある。
 人を嫌うことも、中傷することもない紫龍が唯一、口汚く罵る相手がいるのだ。
 未だに、何故このような男が黄金聖闘士でいられるのか理解に苦しむ男、蟹座キャンサーのデスマスクである。
 嫌ならば無視して関わらないようにすればいいのだが、そうもいかない事情が余計に紫龍を苛立たせる。何故ならデスマスクは、自分の恋人である山羊座カプリコーンのシュラの長年の親友なのだ。シュラと付き合っていれば、当然デスマスクとの接点も増える。
 かくして、顔を突き合わせるたびに売り言葉に買い言葉の喧嘩をしたり、時に必殺技が飛んだり……という小競り合いが続くようになったのだ。
 最初にここを訪れた時のような、死臭に満ちた強烈な負のエネルギーは、今のこの宮にはない。だが、守護している人物のふてぶてしい小宇宙は紫龍の癇に障った。
(手早く抜けてしまおう)
 紫龍は心に決めて、足早に宮を通り過ぎようと歩調を速めて中に入った。
 デスマスクは宮に隣接している寝殿にいるのか、宮内に彼の気配はない。その寝殿へ向かうための扉の前を通りかかった時、紫龍は鳴き声のような声を聞いた。
(何だ?)
 足早に通り過ぎてしまおう、という決意はどこへやら。
 紫龍はうかつにもその場で足を止めてしまった。
 気に入らない男ではあるが、何かあったのならばそのまま通り過ぎてしまうのは紫龍の信条に反する。だが寝殿へ続く扉を開くのは、ためらわれる。

 扉を開けるか、そのまま通り過ぎてしまうか。

 紫龍が逡巡していると、突然内から扉が開かれた。
「あ? 何だ、てめェか」
 中から出てきたのは、デスマスクだった。
「外で誰かうろちょろしてると思って出て来てみたら、てめェとはな。ったく、出てきて損しちまったぜ」
 不機嫌そうな表情を隠しもせず、デスマスクは紫龍を見下ろしてきた。
「小宇宙でわからなかったのか? 黄金聖闘士のくせに」
「ああ? てめェの小宇宙なんざ、眼中にねぇんだよ小僧」
 完全に見下しているデスマスクの態度に、紫龍はカッと怒りが頭の頂点に上るのに任せて睨みつけた。
 デスマスクとは、顔を合わせるたびにこのようなやりとりを繰り返している。
 紫龍が、少しは気遣ったり普通に話したりしようと努力しようとしても、いつもデスマスクの方がそれをさせない。紫龍の生真面目な性格を知って、敢えてそれを受けるのを拒んでいるのか。先回りするように紫龍の感情を逆撫でて、見下して、侮蔑の言葉を投げつけてくる。
「眼中にないくせに、わざわざ出てきたというわけか。相変わらずヒマな男だな」
 わざと紫龍を怒らせたいのか、挑発するようなデスマスクの言葉に、紫龍はいつも無視しようと思いつつも乗せられてしまう。

 この男の言葉に乗ってはいけない。

 冷静さを取り戻そうとした時、再び鳴いているような声が聞こえてきた。
 扉が開いたことで、先ほどよりも強くそれは聞こえてくる。
「ああーーっ、ああ――おぅ」
 女の喘ぎ声だと。
 シュラと付き合い始めるまで、恋愛には無縁だった紫龍でも気づいた。
「貴様、これは何だ?」
「あーん? ああ、これか? AVだよ、AV。アダルトビデオ。お子様のてめェにゃ見れねぇヤツだ」
 それがどうかしたか?と言わんばかりのデスマスクに、紫龍は頭の中で糸が数本切れたのを自覚した。
「神聖な聖域にそういうものを持ち込むとは、どういう了見だ?」
「別にいいだろうがよ。大人の男の娯楽だぜ? てめェにどうこう言われる筋合いはねぇよ。だいたい、当の教皇が私情丸出しでてめェの師匠を手元に置いて、毎晩離さねぇんだからな。非難される覚えはねぇ」
「シオン様を侮辱する気か!?」
「事実だろうがよ。ま、てめエの師匠もまんざらじゃねぇ様子だがな」
 ニヤニヤと下卑た笑いを浮かべるデスマスクに、反吐が出そうだと紫龍は感じた。
(これ以上この男と言い争いをしても、時間を無駄にするだけだ)
 何よりも、これ以上不快な会話をするのも、不快な顔を見続けるのも嫌だった。
「そういう物でしか欲求不満を解消できないとは、相手がいないとは哀れだな。邪魔をした」
 紫龍はそうい言い捨てて、巨蟹宮を出て行こうと踵を返した。
「待てよ、小僧。聞き捨てならねぇな」
 デスマスクに背を向けようとした肩を、紫龍よりも一回り大きい手が掴んだ。
「誰が相手に不足してるって言ったよ、ああ?」
「図星か?」
「てめェ、シュラや老師がついてるからっていい気になりやがって、青銅が」
 デスマスクの紅い目が剣呑な光を帯びて紫龍を射抜く。
 この男が初めて五老峰に現れた時に感じた以上の恐怖を、紫龍はデスマスクに対して感じていた。
「だいたい、てめェは最初っから気に入らねぇガキだったな」
 肩を掴んだデスマスクの強い力に引かれて振り向かされ、顎を捉えられる。
「大した力もないクセに突っかかってきやがるところも、シュラがてめェみたいなガキを恋人にしやがったのも、気に入らねェ」
「俺は別に、貴様に気に入ってもらおうなどと思ってはいない」
 虚勢だと自覚していたが、紫龍は睨みつけながら言い返した。
「そういう生意気なところが、気に入らねぇって言ってんだよ」
 デスマスクが声を荒げたと思ったら、紫龍は背中を壁に押し付けられていた。足の間にデスマスクの膝が割り込んできて、デスマスクとの距離が縮まる。
 思わず顔を背けた紫龍の頬に、少し遅れて長い黒髪がかかる。

 逃げなければ。

 沈黙が重く垂れこめる中、紫龍はどうやって今の状況を打開するかを考えた。
 紫龍の耳に、デスマスクが再生したままにしているDVDの声が聞こえてくる。艶めかしくて甲高い、女の喘ぎ声が。
「てめェも、ビデオに出てきた女と同じ目に遭わせてやろうか?」
「なっ……」
 何がデスマスクをその気にさせたのか。
 ぞっとするほど低い声で告げられて、二の句を継げずにいる紫龍の喉元に、デスマスクの手が伸びてきた。



 立ったまま後ろ向きにされて、紫龍はデスマスクの性器に貫かれていた。
「くっ……ア――ッ、やめっ!」
 抵抗は、無駄だった。
 青銅と黄金という聖衣の勝負ではなく、小宇宙の勝負でも負けなかったデスマスクを相手に、紫龍は敵わなかった。
 そもそも、シュラしか相手にしたことのない紫龍は、こういう場面には慣れていない。デスマスクの方が圧倒的に優位に立っていた。小宇宙で抑え込まれ、手足の自由が利かなくなったところへ、口腔にデスマスクの性器を押し込まれた。
(助けを呼ぼうとしても、無駄だぜ。俺の宮で、てめェの好きにはさせねぇ)
 性器で紫龍の口腔を蹂躙しながら、デスマスクは冷酷に言い放った。
 丁寧に紫龍を愛撫して、前戯を施してくれるシュラとは全く違う乱暴な扱いに、体よりも心が悲鳴を上げる。まともに解してもいない場所にいきり立った性器を押し込まれて、全身が軋んだ。
 やめろ、という制止が巨蟹宮から寝殿へとつながる廊下に空しく響いた。
「シュラのとは違うだろ?」
 腰を使いながら、意地の悪い声が問いかけてくる。
「太さじゃシュラの方が勝ってるけどな、長さじゃ……俺の方が上なんだよ。だから……」
 言うや否や、デスマスクは内壁にわずかに出ているヒダを擦りながら、奥まで性器を押し込んでくる。
「奥まで届くだろ?」
「ぅあっ!!」
 直腸からS状結腸へとカーブする、まさに最奥の壁を先端で突かれて、紫龍の体が跳ねた。壁にすがりついていた手がズッと滑って、上体が下がって体が鋭角に折れる。
 その弾みで図らずも中にいるデスマスクを締め付けた。
「っ! やってくれるじゃねぇの、クソガキ」
 デスマスクの顔が、痛み混じりの快楽に歪む。
 お返しだと言わんばかりに、デスマスクの手が紫龍の股間へと伸びてきた。クッと軽く陰茎を握ると、先端から溢れている先走りの液が掌を濡らす。陰茎も硬く立ち上がっていた。
「濡れてんじゃねぇか、てめェ。インランな体してやがるぜ」
「あ――っ、や……あっ!!」
「シュラの調教の賜物ってか?」
 容赦なく突き上げてくるデスマスクに、紫龍は明らかに感じている声を上げる。
「どうだ? 嫌ってるヤツに犯されて、感じちまう気分はよ?」
「言うなっ! あ、ああっ!」
「屈辱だろうなぁ、こんなに乱れちまうなんてな」
 楽しげに言いながら、デスマスクは紫龍の腰を掴む。
「でもよぉ、紫龍?」
「あ、あ……っ」
「カラダの相性だけはいいみてぇだぜ、お前」
 深く折れている紫龍の上半身を抱き起して、デスマスクは耳元に囁きかける。
「ホントに気に入らねぇガキだぜ、てめェはよ」
「っ!!」
 グイ、ともう一度奥まで突き上げると、紫龍は声にならない叫びを上げて、体を痙攣させた。
「そろそろ、イかせてもらうぜ」
 デスマスクの腰の動きが速くなった。
 何度も腰を打ちつけられて、肌がぶつかる音が廊下に響く。
「あっ、あ――あぁっ!」
 罪深いことをしている。
 そんなことを考える理性は、とうに失せていた。
 最も嫌っているはずの男に導かれて、紫龍は自分を手放した。


Fin

written:2008.06.21





……石が飛んできそうなモノを書いてしまいまして、申し訳ございません(平謝り;)

一度蟹龍も書いてみようかなぁ、と思ったのと。
デスマスクの誕生日が近かったのと。
このタイトルになっている曲で1作、Hな話を書いてみたかったのと。

全部ひっくるめてみたら、こういう話になりました(滝汗;)

このタイトルは、Gacktさんの楽曲からいただきました。シングル曲で、何年か前にCMにも使われた曲なんですけど。
歌詞がメチャメチャHなんですよ(爆)
多分、すんげぇHなコトを歌ってるんだろうなぁ、と思いながらカラオケでリクエストして確かめてみたら、ホントにエロかった!みたいな(笑)
で、蟹龍で、この曲で書いてみよう……としたら、こうなってしまいました。

ホントは、浮気とか三角関係とか、そういうお話は好きではないんですが。好きなキャラが無理やり…なんてお話も好きではないんですが。
紫龍がどうしても蟹を好きになってくれそうになかったので、泣く泣く、こうなってもらいました。
ていうか、全然蟹の誕生日を祝ってないだろう、という(汗)

でも実際書いてみると……日頃、ここまで口の悪いキャラを書くことがないもので。紫龍を相手にここまで口汚い言葉を書けるのは、たぶん相手がデスの時だけなんだろうなぁ、と思います。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました(礼)



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