新・初・恋

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新・初・恋



送信者: renji
日時: 200●年×月△日 22:17
宛先: sada-86@mbk.mifty.com
件名: 合宿から戻った

貞治

何日かメールを出せなかったけれど、変わりはないか?
俺は今日、ジュニア選抜の合宿から帰ってきた。
練習はハードだったけれど、楽しかったよ。
詳しくは、また会った時に話す。
お前に土産も渡したいから、都合のいい日を教えてくれ。
久しぶりに、俺がそっちへ行くよ。

それと、合宿先で一緒になった、氷帝の跡部と山吹の千石。
データを取っておいたから、ファイルにして送っておく。
俺よりお前の方が試合をする機会も多いだろうから、
参考にしてくれ。
何かわからないことがあったら、言ってくれ。

それから、貞治。
合宿から戻ってきたら、お前に言おうと思っていたことがある。
俺は……


 その文章を読んだ時。
 俺は心臓が止まるかと思った。
 そしてしばらくの間。
 画面を凝視したまま、固まってしまっていた。


 パァン! バスッ。
「ネット、15-0」
 パァン! ガシャッ。
「アウト、30-0」
 パァン!
「…またアウト、40-0」
 パァン! ガシャッ。
「ホームラン。4-0」
 はぁ。俺は思わずため息をついた。
 さっきから、ボールを打ってもまともにコートに入らない。
 さすがに呆れたんだろう。手塚が眉間に皺を寄せてネットまで歩いてきた。
「乾。お前、やる気はあるのか」
「ごめん」
 射るような鋭い視線を受け止められなくて、俺は俯いた。
 手塚を怒らせるのも、無理はない。サーブを打ってもサービスエリアには飛ばないし、リターンを返してもネットかアウトなのだから。
「これでは練習にならない。壁を相手に打った方がまだましだ」
「……ごめん」
「何があったのかは知らないが、練習中くらい頭を切り替えろ。レギュラーがそれでは、全体の士気にもかかわる」
「うん」
 叱りつけるような口調の手塚に、俺は何も言い返せなかった。
「っていうかぁ、ここ最近乾ってば調子悪いよね。元気ないっていうか」
 審判席から英二も割り込んできた。
「どんな理由があるにせよ、練習中に気を抜くな。乾、グラウンド30周だ。今すぐ行って来い」
「うん……」
 手塚から部長命令が下る。まぁ、これだけぼんやりしてたら、走らされるのも仕方ないよな。手塚にとって、部活は練習しに来る所であって、ぼんやりする所じゃない。
 それに反する者には、容赦なく罰を科すのが手塚だ。
 俺はラケットをフェンスに立てかけて、コートから出た。そして言われたとおり、グラウンドを走り始めた。


「ねぇ手塚、乾に走れって言ったのって、30周だったよね?」
「そうだが」
「……止めなくていいの? もう45周目だよ、あれ」
「……本当にぼんやりしてるにゃぁ、乾ぃ」
「多分、自分が今何周走ってるか、わかってないんだろうな」


 家に帰ってから、俺はベッドに寝転がって天井を見上げていた。一応、夕飯は食べたけれど、すぐに部屋に戻ってきてしまった。
 いつものようにパソコンを起動して、メールをチェックして。
 返事を出さなければ、とあのメールを呼び出したものの、何もする気になれなくてそのままベッドへ寝転がった。
(それってつまり、恋煩いで心ここに在らず状態、ってこと?)
 手塚に走れと言われたものの、何周走ったか全然数えていなかった俺を止めたのは不二だった。自分でよければ話を聞く、と言ってくれた不二に俺はだいたいのことを話した。
(恋煩い? どうしてそうなるんだ)
(だって、そうじゃない。その相手のこと、何とも思ってないならお断りしてそれでお終いでしょ? なのに、そうやって思い悩むってことは、少しくらいは気があるってことなんじゃないの?)
 不二にそう言われて、俺は否定できなかった。
(ただの幼なじみだと思っていた相手が、突然恋の相手になることだって、そんなに珍しいことじゃないと思うけど)
 ベッドの上から、俺はつけっぱなしにしているパソコンの画面を見た。もう、何度も読み返して、内容を覚えてしまったそのメール。
(俺は、お前に恋をしている)
 ただ好きだと言われただけならまだ、はぐらかすことはできるけれど。恋をしているなんて言われたら……それを受け入れるか、拒絶して気まずい思いを抱えて友人として付き合っていくか。あるいは、友人にすら戻れなくなるか。そのどれかを選ぶしかない。
 わかっていて、そういう書き方をしたんだろうと、俺には推測できた。中学に上がるまでは誰よりも側にいて、離れた今でも俺を一番理解している相手だから。
 パソコンから目を逸らして、部屋の中に視線をさまよわせると、その写真が目に飛び込んできた。ダブルスを組んで出場した大会で優勝して、二人並んで撮ってもらった写真。それを見るたびに優勝した時の嬉しさを思い出して、励まされる宝物だった。
 けれど、あのメールを受け取ってからは。見るたびに戸惑って、あいつの顔を正視することができないでいる。なのに、俺は写真立てを伏せることもできないでいた。
 俺の隣で、嬉しいくせに、顔には出さずに映っているあいつ。
(どうしてなんだ、蓮二……)
 もう何度目なのか数えてすらいない問いかけ。何度問い掛けても、答えなんて帰ってくるはずのないそれを、心の中で繰り返した。


「貞治。……貞治、起きろ」
 誰かに呼ばれていると、頭の何処かが認識しているようだった。
 その聞き覚えのある声が誰のものなのか、霞のかかったような頭では思い出せなかった。
「貞治……起きないなら、キスをするぞ」
(え……キス……? ――っ!?)
 一瞬のうちに覚醒して目を開けると、蓮二が俺の顔を覗き込んでいた。
「蓮、二……? 本物?」
 思わず問い掛けると、蓮二は呆れたように呟いた。
「お前……突っ込み所はそこじゃないだろう。開口一番がそれか?」
「え、でも……」
 いつのまに?
 どうして?
 頭の中で疑問符が騒いでいた。けれどそれは言葉にはなりきらなくて、俺は絶句してしまった。
「メールに書いておいたんだけどな。明日は部活が休みだから、久しぶりに顔を見せに行くと」
「そう、だっけ……?」
 問いかけはしなかったけれど、俺が何を聞きたいのかわかったんだろう。蓮二は自分から話してくれた。
「お前も休みなら教えてくれ、とも言っておいたんだけどな。メールが返ってこないから、一昨日電話してみたんだ。そうしたら、おばさんがお前も休みだと教えてくれた」
「そうだったんだ? でも、母さんそんなこと一言も……」
「お前を驚かせたいから、内緒にしておいてくれと頼んでおいた。快く承知してくれたぞ」
「……まったく、しょーがないなぁ」
 俺は呟いて、起き上がった。面白いことが好きで、時々こういう稚気に溢れたことをする人ではあるけれど。
(よりによって、こんな時に……)
 思わず毒づいた時、見計らったように部屋のドアがノックされた。
「蓮ちゃん、ハル君起きた?」
「ええ、起きましたよ」
 俺に代わって、蓮二が返事をすると、毛布と枕を抱えた母さんが中に入ってきた。
「もう、せっかく蓮ちゃんが来てくれたっていうのに、電気もパソコンもつけっぱなしで寝ちゃうんだから、ハル君ってば」
「え? あ……ごめん」
「敷布団持ってくるから、床に散らかしてるノートとテープ、片付けなさい」
「ああ」
 俺は床のノートとテープを、とりあえず本棚の空いている場所へ詰め込んだ。そうして空けた場所に蓮二の布団を置いて母さんが出て行って、俺と蓮二は二人きりになった。
「それで、いつからいたんだ?」
「いつから、とは?」
「俺が寝てる間に来てたんだろ」
「ああ。ついでに、寝顔も見せてもらった」
「……そういうこと、真顔で言わないでくれるかな」
 相変わらず瞼は閉じられたままで、蓮二はしゃあしゃあと言ってのけてくれる。俺の部屋に来た時はいつもそうするように、俺のベッドに腰を下ろして。
「そう言うな、今更だろう」
「確かに、お互い寝顔なんて見慣れてるけどね。で、俺の質問に答える気はないわけ?」
「俺が来た時には、お前はもう寝ていたぞ。呼び鈴にも、ドアを開ける音にも気づかないくらいにな」
 慣れないことを考えていて、そのまま熟睡したっていうことか。
「パソコンの電源は?」
「俺が切っておいた」
「……見られて、ないよな」
「俺が送ったメールか? それなら心配ない。俺が来て、おばさんがドアを開けた時にはスクリーンセーバーになっていたから」
「なら、いいけどね」
 俺は蓮二から送られてきたメールを開いたままにしていた。あれを見られていたら、さすがの母さんもあんな普通に蓮二に接する、なんてことはないだろう。
「で、返事が来ないから気になって会いに来たわけ?」
「正解率50%だな」
「半分しか合ってないの?」
「ああ。合宿に行ったついでに土産を買ってきたから、届けに来た」
「なるほどね」
 頷いた時、適当に積み上げていたノートが、ドサッと音を立てて本棚から崩れてきた。適当に突っ込んでしまったせいで、バランスが悪かったらしい。
「……っと、ごめん」
 母さんが蓮二にと用意してくれた布団の上に、ノートが崩れ落ちていた。俺は本棚に空きを作って、ノートを何冊か掴んで立てていった。
「それは、毎日書き溜めているデータか?」
「ああ。ほとんどはパソコンに入ってるんだけどね。時々は見返したいから、捨てられずに取ってある」
「お前は、本当に物持ちがいいな」
 蓮二は俺の横にしゃがみ込んで、ノートを1冊取り上げた。そして、中は見ずに呟いた。
「……青学の連中が、羨ましい」
「どうして、そう思うんだ?」
「毎日お前にデータを取ってもらえるだろう?」
「……そんなに、俺にデータ取ってほしいの、蓮二?」
「取ってほしいな、お前になら」
 口説き文句とも取れるような一言を口にして、蓮二はそのノートを俺に差し出してきた。青学最強にして、俺が一度も勝てたことのない男、手塚のデータばかりを集めたそのノートを。
「それだけじゃなくて、お前のデータも取りたい」
 本棚にノートを立てていると、瞼の奥に隠された蓮二の視線を感じた。
「俺のデータなら、今までさんざん取ってきただろう」
「でも、ここ1~2年のデータは取れてない。お前が、転校してしまったからな」
 そう言う蓮二の声が、少し寂しげに感じた。
 神奈川から、東京へ越してきた直後の寂しさが、俺の中にも蘇ってくる。生まれる前から母親同士が仲良くて、その息子の俺たちも仲良くなって。一緒にテニスを始めて、一緒に強くなって、一緒に大会に出て優勝した蓮二と離れるのは、本当に辛かった。
 毎日のようにメールのやりとりはしているし、関東大会まで勝ち上がれば大会会場で顔を合わせることだってある。それに、時々はお互いの家を行き来していた。
 それでも、俺には青学で。蓮二には立海大附属で、新しい仲間や友達を見つけて、お互いの知らない部分が増えていくのは仕方ないことだった。
 環境が変わってしまったんだから、と頭ではわかっていても感情がついてこない。青学に入った当初は、そんなことがよくあった。
(蓮二がここにいたら、どうするんだろう?)
 そんなことを考えたのも、一度や二度じゃない。
(蓮二も、そうだったんだろうか?)
 思わず蓮二を見ると、蓮二は俺を見て微笑していた。
「お前を困らせてしまうのは、わかっていたんだ。それでもお前のことは、ただの幼なじみで終わらせたくない」
「それって、あのメールのこと?」
「ああ。ただ好きだと言うだけでは、誤解されるかもしれないと思ってな」
「それで、あんな……」
 やっぱり、ダテに立海大附属の参謀はやってない、ってことだ。俺の推測は当っていた。
「お前が好きだ、貞治」
 改めて、言われた。
 メールで読んだ時は、ただ驚いただけだったけれど。こうして直接言われると、不思議と悪い気はしなかった。そう思い始めていた俺は、
「できれば、お前のファーストキスも…もらっておきたいな」
(――え?)
 蓮二の言葉に、一瞬で頭が冷えてしまった。
「ファーストキスって……」
「好きな人や恋人ができた、という話は聞いていないからな。まだなんだろう?」
「……覚えてないんだ……」
 寂しいというより、なんだか哀しい気がした。
「貞治?」
 本当に、蓮二は覚えていないってことか。
 そう思うと、無性に腹が立ってきた。俺は蓮二が俺に手渡そうとしていたノートを引ったくって、無造作に本棚へ突っ込んだ。
 まだ幼稚園に通っていた頃。家に遊びに来た時に、ふとしたことから蓮二が言い出したことだった。もう、何がきっかけでそんな話になったのすら、覚えていないけれど。
 その時蓮二が言ったことと、その後のことははっきりと覚えている。
(キスって、どんなものか知ってる?)
(ううん、知らない)
(じゃぁ、ボクとしてみる?)
 自分から言い出しておいて。
「なんで、忘れてるかな……」
 俺のファーストキスなんて、とっくに蓮二が奪っていったっていうのに。
 怪訝そうな顔をする蓮二をよそに、俺はノートを掴んでは本棚に並べて、最後の1冊を並べ終えて蓮二をどかせた。
「貞治、何をそんなに怒っているんだ?」
「怒ってないよ」
「怒っているだろう」
 蓮二を部屋の隅に追いやって、ベッドの下に蓮二の布団を敷いてやる。それが少し乱暴になってしまったのは、仕方ないと思う。
「貞治、俺は何かお前の気に障るようなことを言ったか?」
「……本当に、覚えてないわけ?」
 シーツを整える俺に、蓮二が戸惑ったように問いかけてくる。俺は、逆に聞き返してやった。
「覚えてないとは……何のことだ」
「ファーストキス」
「キス?」
 全く心当たりがない、といった様子の蓮二に、俺はため息を一つついた。蓮二は忘れたふりをしているわけじゃなくて、本当に忘れてしまっているんだ。
「とっくの昔に俺から奪ったくせに、なんで蓮二の方が忘れてるわけ?」
 教えてやっても、蓮二はしばらく黙って記憶の糸を辿っているようだった。
「それとも、データの更新に頭のメモリの大半を使っちゃってて、昔の記憶は消去、とか?」
「……貞治、俺は…その、本当に……?」
「そうだよ。……まぁ、ちょっと触れただけだったけど」
「どれくらい?」
「どれくらい、って……」
 思い出すために、俺からデータを引き出そうとするのはわかるけど。さすがに、どんなキスだったか説明しろと言われて、できるものじゃない。だいたい、覚えているのは蓮二とキスしたっていう事実だけで……。あれ?
 考えながら、俺はふいに気がついた。もしかして、これは……。
「もしかして、蓮二?」
「なんだ」
「お前、俺にキスさせようとしてる?」
 聞いてみると、図星だったらしい。蓮二は楽しそうに苦笑した。
「お前は本当にかわいいな、貞治」
 微笑いながら言われた言葉に、今度は俺の方が面食らってしまった。
「……どんなデータ取って、どう分析したらそういう答えが出るの」
「データじゃない。そう思っただけだ」
 言いながら、蓮二はシーツを整え終えて枕を取ろうとした俺に抱きついてきた。
「ちょ、ちょっと…蓮二……!?」
「そんなだから、お前が好きなんだ」
 抱きしめられると、蓮二の鼓動が直に伝わってきた。余裕ありそうな顔して淡々としゃべってたくせに、蓮二の心臓はドクドクと早鐘を打っていた。
「蓮二……」
「なんだ」
「心拍数、上がってるよ」
「お前……抱きしめられて言うセリフが、それか?」
 まったくしょーがないヤツだ、とぼやく蓮二の声が頭の後ろから聞こえてきて、ついでに合わさった胸からも振動で伝わってきた。
「だって、本当の事だろ」
「好きな相手とこうしてるんだから、当然だろう」
「……ドキドキするってこと?」
「ああ」
 こうして抱きしめられていると、蓮二のドキドキが伝染してきそうだった。
 この距離では、ちょっとした変化も全て蓮二に知られてしまう。俺の鼓動が早くなるのも、全部。
 そう思うと、この体勢でいることが急に恥ずかしく思えてきた。
「れ、蓮二……」
「なんだ?」
「ねぇ、ちょっと離れて……」
 離しかけようとして蓮二を見上げると、俺を見下ろしていた蓮二の視線とまともにぶつかってしまった。蓮二の細い目がさらに細くなって、でも優しいと思った時。ふいに、蓮二と俺の距離が縮まった。と思ったら。
「―――っ!?」
 蓮二が急にその距離を一気に詰めて、唇に柔らかくて暖かい物が押し当てられていた。
 でも、それは一瞬のことで。触れた、と思った時にはもう離れてしまっていた。
「蓮、二……」
 唇が触れるか触れないか、ギリギリの位置にいる蓮二を、俺は思わず呼んでいた。
「これが、本当の意味でのファーストキスだ、貞治」
「蓮二……」
「前にキスしたのは、多分単なる好奇心だったんだと思う。でも、今のは違う。お前が好きだから、お前にキスしたい」
 静かに、けれど強く宣言して。蓮二はもう一度、今度はさっきより少し長く、俺にキスしてきた。
 拒絶する、なんてことは思いつかなかった。俺はただ目を閉じて、それを受け入れるだけだった。でも蓮二の唇が触れる瞬間、何故か俺は微かに震えていた。
「貞治、俺が嫌いか?」
 触れるだけのキスから俺を解放して、でも抱きしめた腕はそのままで、蓮二が訊いてきた。
「俺のデータ取ってるくせに、そんなこともわからないのか?」
「わかっている。でも、お前の口から聞きたい」
「……嫌いなら、こんなことはさせない」
「でも、まだ好きかどうかは、わからない…か?」
 さらに問われて、俺は黙って頷いた。
 蓮二のことは、嫌いじゃない。喧嘩は何度もしたし、口では嫌いだなんて言ったこともあるけど。でも、本当に蓮二を嫌いになったことなんて、多分一度もなかった。
 だけど、急に好きかどうかと訊かれたら、正直な所よくわからない。何せ、14年以上も幼なじみだと思っていて。好きだと言われてからもまだ9日しか経っていないんだから。
 そう正直に答えると、蓮二は軽く苦笑した。
「それもそうだな。でも、俺を好きになる確率は高いみたいだな」
 そんなことを言う蓮二に、俺はまた軽くキスされた。
「好きか嫌いか、って言われたら…好きって答えるよ、俺は。だけど……」
「だけど?」
 先を促されて、俺は続けた。
「恋人として好きになれるかどうかは、まだデータが少なすぎて、判断できない」
 すると、蓮二に声を上げて笑われてしまった。
「……笑うなよ」
「お前は本当にかわいいな、貞治」
「だから、何をどう分析したらそういう――っ!」
 そして4度目のキスをされてしまった。
「ちょっと遠距離になるけど、メールは今までどおり毎日送るし、時間を作って会いに来る。だから、貞治」
 言葉の合間に、俺にその日5度目のキスをして。蓮二が吐き出した言葉に、俺は耳まで赤くなった。
「キスの数だけ、俺を好きになればいいよ」


Fin

written:2003.11.8

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