男の子の視点から見た恋愛物語。だけど、一筋縄ではいかない。でもやっぱり、ラブストーリー。
っていう映画でした。でもって、すんげぇ泣きました。
監督が「ケイゾク」や「溺れる魚」や「池袋ウエストゲートパーク」の堤幸彦監督ですから。王道ラブストーリーなんだけど、ミステリーな部分もあって、笑える場面もかなりあって、エスプリが効いていて、コラージュのような映像がとてもオシャレで。
過去の堤作品を知っている人が観たら、「ああ、なるほどねぇ」的なお遊び要素もたっぷりでした。そして、最後の大どんでん返しもあったりして。ヤラレタ、って思いました。何が?と思われた方は、ぜひとも劇場で(あるいはレンタルで)確かめていただきたいですね(笑)。
で、この映画。何がいいって、主演の二人がいい。
広末涼子は「どーしたの?」ってくらいかわいくて、誠人を振り回す自由奔放な感じがよく出てて。感受性先行型の女性って、こんな感じよね、っていう。
そして、松田龍平君ですよ。もう成人したから、“さん”付けにするべきかしら? でも、呼びなれているので君で。この映画は男の、つまり誠人の視点から描かれるラブストーリーなんですが、かなり共感できるんですよね、誠人に。恋人に先を越されて苛立ったり、素直になれずに別れてしまったり。でも忘れられなくていきなりニューヨークに飛んじゃって、そこで静流が撮った写真や、出会った人たちを通して成長していったり。
ダメ男から成長していくその過程を、龍平君は見事に演じてくれていました。途中までずーっと抑えた演技をしていて、あるきっかけで急に表情が出てくる。その表情が変わる瞬間が、とても印象的でした。本人も、そのシーンが好きだと話していたようですが。
そしてやはり、あの目ですよ。カメラのファインダーを覗き、狙いを定める目。目力の強さは、デビュー作から際立っていた彼ですが、今回カメラマンの役はまさにピッタリというか、ナチュラルで感性豊かなんだけど、まだ開花しきっていない様子がよく出ていたと思います。
今回、龍平君ファンとしては何が嬉しかったって、彼の肌の露出が多かったことです(笑)。って、変態か、ってコメントなんですけどね。上も下も、脱がしてくれてありがと~、堤監督(はぁと)。状態でした。思えばね、『御法度』の時は、はだけた着物の襟元からビーチクが見えただの、見えなかっただの。そんなことでファン同士、大盛り上がりしたもので。それを思えば、今回の露出度の高さは、最高記録でございました。
そして、笑ったり泣いたり怒ったり。ここまで感情を表に出す役も、今までになかったんじゃないかと思います。『走れ! イチロー』も、普通の男の子を演じていたんですが、それ以上に、今回の誠人はナチュラルで、ニューヨーク着いた途端に「さみ~!」って叫んだり、殴られて「ついてねぇ~」って情けない言葉を口にしたり、といろいろな顔が見られて、幸せでした。そして、やっぱり、上手くなってます。
また、今回は英語でのセリフが多かった彼。まず、セルフナレーションが英語ですからね。それも、バカ丁寧なクィーンズ・イングリッシュ。残念ながら、どこがどう丁寧で、ニューヨーカーたちがどうブロークンなのかまでは、聴き取るだけの語学力がないのですが(苦笑)。それでも、全編を通しての英語のセリフと、それを使ってのお芝居というのは、本当に大変だったのではないかと思います。ロケ先のニューヨークも、とても寒かったということですしね。
本当に、龍平君がいいなぁ~。と思える、ファンとしてはとても嬉しい映画でした。あ、もちろん、映画そのものもいい話で、切なくて、これを書きつつ思い出すだけで泣き出しそうになってしまったりするんですけどね。不器用なんだけど、静流を思いやって発せられる言葉とか、ニューヨークで静流の行動を追体験するシーンとか、本当に良かったです。
あと役者さんで注目したいのは、やはり小池栄子。ニューヨークでの静流の友人ということで、彼女は物語の鍵になる人物なんですが、彼女の演技も光ってました。
そして、これが映画初出演だという山崎樹範。声だけは、毎週「テニスの王子様」で聴いてたんですけどね。誠人の同級生で、「アンアンに投稿する写真だから」と女の子を騙して誠人に写真を撮らせ、実はアダルト雑誌に投稿してて、それがバレて銅像に括り付けられちゃったり。のっけから龍平君に殴られたり、コミカルな役だったのですが(どことなく堀尾と重なってしまって、やっぱりその路線か?なんて思ってしまったものです)、いい味出してました。
でもって、大杉漣さん。ものすご~くチョイ役なのに、異様な存在感があるのは、やはりさすがでございます。
全体として、誠人がニューヨークに飛ぶまでがちょっと長いかな?という印象はありましたが、それでもミステリーやサスペンス、ハードボイルドや笑いといった、いろいろな要素が詰め込まれていて、観ていて飽きることはありませんでした。映像そのものも、カメラが連続でシャッターを切るようなコマ送り映像があったり、写真を撮った時に偶然入ってしまう光が映像にも入っていたり。そのあたり、16mm、8mm、ビデオ、スチール、ポラロイド、デジカメ等等、様々な形式やアングルで撮影されたという特徴や、主人公の二人がカメラマンであるといった設定も、よりよくわかるようになっていたように思います。
あと、忘れてはいけないのが、9・11。
この事件のために、撮影が延期され、制作期間が足掛け3年になってしまった。という経緯があるらしく、物語の中でも、誠人がラウンド・ゼロを訪れるシーンが出てきます。そこで、「うわー、すごーい」と言いながら、ピースをして写真を撮る日本人カップルが出てくるんですが、あの事件をただのイベントとしてしか受け取れない人も、実際にいるんだろうなぁ。でもって、実際に結構大勢の日本人が、そうやって写真に映ってるんだろうなぁ、と思うとなんだか哀しい気持ちになりました。
まっすぐで、だからこそ不器用で、離れていても切れることのない二人の絆に、それを追い求めながら成長していく誠人の姿に、そして二人を待っている真実に。かなり泣かされました。いい映画でした。
そして、この映画で更なる成長を遂げた松田龍平君に、惚れ直しました。