「アンコールワットを撮れれば死んでもいい」
70年代初頭に激動のインドシナ半島に散ったカメラマン、一ノ瀬泰造氏の鮮烈な生き様を映画化した作品です。
ベトナム戦争がカンボジアに拡大していく中で、戦場を駆け回るうち、アンコールワットを撮影することにとり憑かれてしまい、アンコールワットの射程距離まで接近しながら、あと一歩のところで26歳になったばかりの生涯を閉じた泰造さん。映画は、実際に泰造さんが撮影した写真を織り込みながら、彼の生涯を描いていきます。
その一ノ瀬泰造さんを演じるのが、当時彼の年齢とほぼ同年齢、顔も本人が「瓜二つ」と認めるほどよく似ているだけでなく、誕生日が泰造さんの没年日と同じである、という浅野忠信。銃弾と死で満たされた戦場に身を置きながら、力いっぱい笑い、泣き、叫ぶ。いつになく「熱い」浅野を見ることができます。
また、彼が英語・カンボジア語・ベトナム語などなど、日本語以外のセリフで演じる姿もファン必見モノです。実際の泰造さんも、カンボジア語には堪能だったということで、演じる浅野も相当練習したのだとか。でもって、この映画でも彼の胸毛とギャランドゥはたっぷり堪能できます。(←おいっ;)
冒頭の、戦場を走りながらシャッターを切るシーンを撮影し、そのままパッタリ倒れてしまい(なんと、食あたりで;)、せっかく鍛え上げた体が細くなっしまった、という苦労もなさったようですが、その熱演振りは十分伝わってきます。
結月は、地元の映画館で観たのですが、次の回を待つ人の前に出て行くのが恥ずかしいぞぉ~(^_^;)、というくらいボロボロ泣きました。哀しい戦場の中で、それでも精一杯生きている人々。死と背中合わせの状況でも、笑って生活する人々の姿が、より一層戦争の悲惨さや死の残酷さを引き立たせるように思えました。せっかく少し泣きやんだと思ったら、またすぐに号泣シーンがやってくる。
ハンカチ一枚では足りないくらい、涙、涙の一本です。
そして、未だに世界各地には地雷で命や体の一部を失う人々が後を絶たないという状況を思い、心が痛む一本でもあります。
この映画に主演したということもあったんでしょうか。2001年に坂本龍一氏が地雷撲滅キャンペーンとして発売したCDに、浅野はジャケットのイラストを提供していました。