2004年初の狂言鑑賞は、茂山さんの狂言会になりました。
チケットを取る時~上演日の数日前まで、てっきり日曜日に行われるのだと思い込んでいて、数日前に
「あれ? この日ってもしかして、平日? ……ちょっと待て。授業あるじゃん!?」
と青くなった、という(苦笑)
授業終わってから速攻で学校を出て、駅へ急ぎ、新幹線で大阪へ乗りつけて、開演時間に間に合った、という慌しい中で見に行った狂言でした。
でも、行って良かったvvv
演目が始まる前の、宗彦・逸平・童司3氏によるフリートークでは、狂言以外の舞台や映画、ドラマなどで活躍している彼ら3人の近況報告&最近ハマっているモノ、という話題で盛り上がりました。
逸平さんはサッカーのスペインリーグにハマっている、というお話。
童司さんはチベット仏教のお経を収録したCD-BOX(なんと、17枚組み!)にハマっていて、その日の気分によって「うん、今日は11枚目の盛り上がっていく所」といった具合に聞き分けている、というお話をされていました。劇場の最前列に座っていた方が、やはり同じくチベット仏教のCDが好き、ということでステージと客席で話が盛り上がりかける、という一幕も(笑)
宗彦さんは、「俺にハマってる」とナルシストぶり(?)を発揮(笑) 全然釣れないのに釣りに行って、釣り糸を垂らしている自分が好き、といった具合で。
フリートークでは、これから演じられる演目の解説もかねていたはずなんですが…ほとんどなかったですね(笑)
新作狂言の「惟盛」は、中東での今の情勢を物語るようなお話でした。
惟盛という人は、舞や笛を愛する性格なのですが、平家に生まれたということで、将として行きたくもない戦に出た、という人。戦には出たものの、源氏に負けて落ち延びて、京にいる妻や子供に一目会いたい、と熊野まで戻ってきている、という事情が。
一方の茶屋の主は、もともと京に住んでいたのですが、源氏と平家の戦で家を焼かれ、身内も亡くして熊野の街道沿いで茶屋を営んでいる、という事情がある、という。
そんな二人が、それぞれの事情を語り合い、お互いに同情しあい、惟盛が去った後。茶屋の主人が
「このような時代に、清盛の孫として生まれていなければ、惟盛様も平和に過ごすことができたのに」
と語るのが印象的でした。
続く「座・狂言 無布施経」は本邦初、落語のように一人で演じる狂言でした。
話を始める前に、千之丞さんが話のキーワードとなる言葉の解説をして、それから話しに入る、という形を取っていました。
毎月決まったお布施をもらっている檀家が、そのお布施を出さないことをいぶかしんで、
「毎月もらっているのに、今月だけもらわない、というのはどうだろう? もし来月からも、お布施が出て来なかったら死活問題だし、どうしよう」
といった感じで悩みつつ、結局その檀家がお布施を渡していない、と思い出すまで二度三度と、あの手この手を使って檀家の家に押しかけ、その度に「ありがたい話を聞かせて差し上げよう」と言いながらも「お布施を渡せ」と言い続ける僧が滑稽で、面白いお話でした。
また、普段は二人で演じられるこの「無布施経」を、声色を使い分けながら一人で演じる千之丞さんも、これまたお見事でございました。
とりあえず、この日が試演であり初演だ、と仰っていたのですが、これからも続けていただけたらなぁ、と思います。……落語好きな逸平ちゃんあたりが演ったら、また面白いかも、なんて(笑)
休憩を挟んで、次に演じられたのは「仁王」
実は、このタイトルに惹かれて「見てみたいかも」ということで、この舞台を見に行くことを決めた、という(笑)
始まる前に、宗彦さんが一人で出てきて、話の解説をしてくれました。
「負けが続いた博打打ちが、仁王に化ける。その仁王に、いろいろな人が願い事をする。もちろん、僕も願い事をする。皆、アドリブだ」
といった口調で、どこか芝居がかった声で解説する宗彦さんがとても面白くて、笑いをこらえるのに必死でした(苦笑)
七五三さん演じる博打打ちが仁王尊に化けて、そこに大勢の参詣人が訪れます。そして一人一人願い事をするのですが……これが、爆笑モノ(笑)
丸石さんは「私はもうあきらめております。ですが、どうぞ、茂山七五三(目の前で仁王尊に化けている、張本人;)の髪がこれ以上抜けませんように」と、七五三さんの髪の心配を(笑)
続く佐々木さんも、確か同じように七五三さんの髪の心配をされていたと思います。
続く逸平ちゃんは、「父(目の前で仁王尊に化けている七五三さん;)があまり酒を飲み過ぎないように」とプライベート話を暴露(笑)
さらに続く宗彦さんは
「宿題もやります。絵日記も書きます。だから夏休みを下さい」
………
……何を言い出すのかと思えば、「夏休み」っすか!?
と、会場中が爆笑の渦に包まれていました(笑)
最後の童司さんは「出席日数は全然足りませんが、大学を卒業させて下さい」と、これまた切実なお願い(笑) まぁ、茂山家の狂言師は忙しいですからねぇ。
それぞれが願い事をして、お供え物をたんまりとだまし取った博打打ち。それでやめておけばいいのに「こんなことで儲かるのなら、もっと儲けてやろう」となるのが、狂言のお約束でございます(笑)
仁王尊のポーズを取ったものの、さっきと格好が違う、と怪しまれ、結局正体をバラされてしまう、というオチがついていました。
っていうか、七五三さんは参詣人が願い事を言う間、「くわっ!」と口を開けて、目をカッ!と見開いて、独鈷を持った手を後ろへ掲げ、空いている手は前方へ突き出して開く、というポーズをずーっと取り続けて身動き一つしないのです。いやいや、さすがに日頃から鍛錬しておられる方は違うなぁ、と思いながら見てしまいました。
でも、「仁王」=「インチキ」っていう方程式が……(笑)