今日も元気だ! 狂言会DX

今日も元気だ! 狂言会DX

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(2004年5月31日 シアター・ドラマシティ)
【演目】
●トーク 『僕の狂言 君の狂言』
出演:茂山宗彦、茂山逸平、茂山童司

●新作狂言 惟盛
演者:平惟盛=茂山あきら  茶屋の主=茂山千之丞
物語:平清盛の孫にあたる平惟盛は、平家滅亡への世の移り変わりのさなか、戦争を嫌い、笛や舞を愛する美形の氏でありました。そんな惟盛の気持ちを通して演じられる新作狂言で、今の時代にも代弁される厭戦(えんせん)劇と言えるでしょう。

●座・狂言 夢布施経(ふせないきょう)
演者:茂山千之丞
物語:毎月決まって贈っているお布施を忘れている檀家と、その檀家からなんとかしてお布施をもらおうと画策する僧の物語です。普段は僧と檀家の二人で演じる古典狂言を、落語のように茂山千之丞が一人で演じる、これぞ「座・狂言(ザ・狂言)」です。

●古典狂言 仁王
演者:博打打ち=茂山七五三  その仲間=松本薫  参詣人=丸石やすし、佐々木千吉、茂山宗彦、茂山逸平、茂山童司、茂山あきら  後見=増田浩紀
物語:負け続きの博打打ちが仲間にそそのかされ仁王に扮し、信心深い人たちから供え物をだまし取ろうとします。大勢の参詣人がおとずれ、それぞれに願をかけます。たくさんの供え物を手に入れた博打打ちですが、はたして最後までだましきることができるでしょうか。参詣人が一人一人願をかける言葉はほとんど台本もなく、その時勢にかけたアドリブを聞かせてくれる、楽しい狂言です。

 2004年初の狂言鑑賞は、茂山さんの狂言会になりました。
 チケットを取る時~上演日の数日前まで、てっきり日曜日に行われるのだと思い込んでいて、数日前に
「あれ? この日ってもしかして、平日? ……ちょっと待て。授業あるじゃん!?」
 と青くなった、という(苦笑)
 授業終わってから速攻で学校を出て、駅へ急ぎ、新幹線で大阪へ乗りつけて、開演時間に間に合った、という慌しい中で見に行った狂言でした。
 でも、行って良かったvvv

 演目が始まる前の、宗彦・逸平・童司3氏によるフリートークでは、狂言以外の舞台や映画、ドラマなどで活躍している彼ら3人の近況報告&最近ハマっているモノ、という話題で盛り上がりました。
 逸平さんはサッカーのスペインリーグにハマっている、というお話。
 童司さんはチベット仏教のお経を収録したCD-BOX(なんと、17枚組み!)にハマっていて、その日の気分によって「うん、今日は11枚目の盛り上がっていく所」といった具合に聞き分けている、というお話をされていました。劇場の最前列に座っていた方が、やはり同じくチベット仏教のCDが好き、ということでステージと客席で話が盛り上がりかける、という一幕も(笑)
 宗彦さんは、「俺にハマってる」とナルシストぶり(?)を発揮(笑) 全然釣れないのに釣りに行って、釣り糸を垂らしている自分が好き、といった具合で。
 フリートークでは、これから演じられる演目の解説もかねていたはずなんですが…ほとんどなかったですね(笑)

 新作狂言の「惟盛」は、中東での今の情勢を物語るようなお話でした。
 惟盛という人は、舞や笛を愛する性格なのですが、平家に生まれたということで、将として行きたくもない戦に出た、という人。戦には出たものの、源氏に負けて落ち延びて、京にいる妻や子供に一目会いたい、と熊野まで戻ってきている、という事情が。
 一方の茶屋の主は、もともと京に住んでいたのですが、源氏と平家の戦で家を焼かれ、身内も亡くして熊野の街道沿いで茶屋を営んでいる、という事情がある、という。
 そんな二人が、それぞれの事情を語り合い、お互いに同情しあい、惟盛が去った後。茶屋の主人が
「このような時代に、清盛の孫として生まれていなければ、惟盛様も平和に過ごすことができたのに」
 と語るのが印象的でした。

 続く「座・狂言 無布施経」は本邦初、落語のように一人で演じる狂言でした。
 話を始める前に、千之丞さんが話のキーワードとなる言葉の解説をして、それから話しに入る、という形を取っていました。
 毎月決まったお布施をもらっている檀家が、そのお布施を出さないことをいぶかしんで、
「毎月もらっているのに、今月だけもらわない、というのはどうだろう? もし来月からも、お布施が出て来なかったら死活問題だし、どうしよう」
 といった感じで悩みつつ、結局その檀家がお布施を渡していない、と思い出すまで二度三度と、あの手この手を使って檀家の家に押しかけ、その度に「ありがたい話を聞かせて差し上げよう」と言いながらも「お布施を渡せ」と言い続ける僧が滑稽で、面白いお話でした。
 また、普段は二人で演じられるこの「無布施経」を、声色を使い分けながら一人で演じる千之丞さんも、これまたお見事でございました。
 とりあえず、この日が試演であり初演だ、と仰っていたのですが、これからも続けていただけたらなぁ、と思います。……落語好きな逸平ちゃんあたりが演ったら、また面白いかも、なんて(笑)

 休憩を挟んで、次に演じられたのは「仁王」
 実は、このタイトルに惹かれて「見てみたいかも」ということで、この舞台を見に行くことを決めた、という(笑)
 始まる前に、宗彦さんが一人で出てきて、話の解説をしてくれました。
「負けが続いた博打打ちが、仁王に化ける。その仁王に、いろいろな人が願い事をする。もちろん、僕も願い事をする。皆、アドリブだ」
 といった口調で、どこか芝居がかった声で解説する宗彦さんがとても面白くて、笑いをこらえるのに必死でした(苦笑)
 七五三さん演じる博打打ちが仁王尊に化けて、そこに大勢の参詣人が訪れます。そして一人一人願い事をするのですが……これが、爆笑モノ(笑)
 丸石さんは「私はもうあきらめております。ですが、どうぞ、茂山七五三(目の前で仁王尊に化けている、張本人;)の髪がこれ以上抜けませんように」と、七五三さんの髪の心配を(笑)
 続く佐々木さんも、確か同じように七五三さんの髪の心配をされていたと思います。
 続く逸平ちゃんは、「父(目の前で仁王尊に化けている七五三さん;)があまり酒を飲み過ぎないように」とプライベート話を暴露(笑)
 さらに続く宗彦さんは
「宿題もやります。絵日記も書きます。だから夏休みを下さい」
 ………
 ……何を言い出すのかと思えば、「夏休み」っすか!?
 と、会場中が爆笑の渦に包まれていました(笑)
 最後の童司さんは「出席日数は全然足りませんが、大学を卒業させて下さい」と、これまた切実なお願い(笑) まぁ、茂山家の狂言師は忙しいですからねぇ。

 それぞれが願い事をして、お供え物をたんまりとだまし取った博打打ち。それでやめておけばいいのに「こんなことで儲かるのなら、もっと儲けてやろう」となるのが、狂言のお約束でございます(笑)
 仁王尊のポーズを取ったものの、さっきと格好が違う、と怪しまれ、結局正体をバラされてしまう、というオチがついていました。
 っていうか、七五三さんは参詣人が願い事を言う間、「くわっ!」と口を開けて、目をカッ!と見開いて、独鈷を持った手を後ろへ掲げ、空いている手は前方へ突き出して開く、というポーズをずーっと取り続けて身動き一つしないのです。いやいや、さすがに日頃から鍛錬しておられる方は違うなぁ、と思いながら見てしまいました。

 でも、「仁王」=「インチキ」っていう方程式が……(笑)

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