Christmas Carol 3
部屋のドアを開けて、中に招き入れられた。
と思う間もなく、政宗は小十郎に抱きすくめられていた。
楽譜や楽器ケースが入ったバッグを床に下ろして政宗を抱きしめ、噛みつくように口づけてきた小十郎の唇を、口腔にねじ込まれてくる舌を受け入れながら、政宗はドアが閉まる音を聞いた。舌を絡め取られ、痛いほど吸い上げられながら、政宗もまた小十郎の背を抱き返していた。
ようやく出会えた、誰よりも愛しい男。
貪り合うような長く激しいキスに、ただ陶酔する。
「こじゅ、ろ……っ」
わずかに唇が離れた隙に呼びかけると、小十郎が真っすぐに見つめ返してきた。
撫でつけていた髪がハラリと落ちて、激情を剥き出しにした視線に射抜かれる。軍師として、兄として、父として、政宗を諌め諭す立場にいながらも、時に政宗以上の苛烈さを見せる小十郎の本性が露わになる瞬間を目の当たりにして、政宗の全身を甘い疼きと同時に戦慄が走った。
獰猛で苛烈な小十郎の視線に魅入られているうちに、再び小十郎が深く、激しく口づけてきた。
目を閉じて翻弄されていると、小十郎の手が忙しなく動いてきた。首に巻いていたマフラーをはぎ取られ、ジャケットのファスナーが外されてダウンジャケットが肩から滑り落ちた。
同時に政宗も、小十郎が着ているコートのボタンを外し、マフラーを奪い取って床に落とした。
早く触れたい。
二人の思いは同じだった。
性急にシャツをめくり上げて、小十郎の指が直に肌に触れる。
外気で冷やされていた体は、キスの間にすっかり体温が上がっている。触れてくる小十郎の指も、熱くなっていた。
「……ぅ、ん……っ」
腹から胸へと小十郎の指が這い上がってくる。
同時に頤から顎の下、首筋と舐め下ろされて、政宗は息をつめた。
小十郎の指が胸の過敏な場所に触れ、体が跳ねる。
首筋を舐め下ろした小十郎の舌が、浮き上がる筋肉の形を確かめるように耳の後ろまで這い上がってくる。
耳にかかる小十郎の吐息が熱い、と感じたその時だった。
「政宗様……」
囁くように、想いの詰まった低い声で呼ばれた。
「……っ、おまっ――っ!」
久しぶりに聞くその声に、政宗の膝から力が抜けた。
床に崩れそうになる政宗を、小十郎が支える。
それでも体を支え切れず、政宗は床に崩れ落ちた。
「政宗様?」
床に膝をついた政宗を気遣って、小十郎が顔を覗き込んでくる。
「大丈夫ですか?」
「……」
政宗から力を奪った原因が自分の声だとは全く気付かない小十郎が、少し恨めしい。政宗は八つ当たりするように小十郎に告げた。
「脱げよ」
告げられた小十郎は、政宗の真意を測りかねていた。
「政宗様……?」
「何度も言わせるな。……脱げよ」
二度命じられて、小十郎に断る権利はない。小十郎はジャケットの袷に手をかけた。
脱力して床にへたり込んだ政宗の目の前で、1枚1枚、身につけている物を脱ぎ捨てていく。
政宗の命令通りに一糸まとわぬ姿となった小十郎の体を、政宗は見上げた。
音楽を生業にしているというのに、小十郎の体は記憶にある昔とさほど変わらず、適度に筋肉に覆われている。
「……相変わらず、いい体してやがるぜ」
「音楽家も体力勝負にございますれば」
「Ha!上等だ」
小十郎が差し伸べてくる手を取って、政宗は立ちあがった。そしてそのまま小十郎に抱きついて、口づけた。こうして生まれ変わってもなお自分より身長の高い小十郎に、少し背伸びをして口づける。
舌を絡ませながら、政宗は小十郎の体をまさぐった。
昔ほど厚くはないが、それでもしっかりとしている胸板を撫でる。
いつも小十郎にされていたように胸の突起を探る。
「……っ、政宗、さま……っ」
感じている様な、咎めるような声が政宗を呼ぶ。
それには応えずに、政宗は小十郎の唇を塞ぎ、引きしまっている腹へと手を滑らせた。
キスを続けながら臍の周りに円を描くように指を這わせて、硬くなりはじめた小十郎の陰茎に手を伸ばす。
政宗がそこを柔らかく握り込むと、小十郎は息をつめた。
「ぅ……っ!」
政宗の愛撫に快楽を覚えている小十郎が、どうしようもなく愛しく思えた。
「会いたかった……お前に」
昔は刀傷の痕があった左の頬にキスをして、政宗は床に膝をついた。
「政宗様!?」
戸惑うように呼ぶ小十郎にニヤリと笑いかけて、政宗は眼前にある小十郎の性器に舌を這わせた。
伊藤政樹として生を受けてから、男と性交渉をもったことはない。
けれど、前世で何度も小十郎と交わった記憶が政宗を動かしていた。同性の性器を愛撫する嫌悪感など、微塵もなかった。
先端から根元へと舐め上げると、たちまち小十郎の陰茎が硬さを増す。
「政宗様……っ、おやめ下さ……――っ」
「いいから黙ってろ。……させろよ」
止めようとする小十郎を制して、政宗は愛撫を続けた。
時折ぴくりと震えて、感じる様を隠さない。
小十郎と交わる度に自分に快楽をもたらし、悶えさせたもの。
政宗は夢中でしゃぶりついた。
先端から溢れてくるぬめった体液を舐め取って、吸い上げる。
「く……ぅっ、政宗様っ!」
思いがけず強い力で引き剥がされた。と思うと、腰をかがめてきた小十郎に激しく口づけられた。
もう何度目になるのかわからない激しいキスに翻弄される。
「こじゅ……ろ……っ」
ぐい、と強く抱きしめられたと思うと、小十郎に半ば引きずられるように移動させられて、政宗はベッドに押し倒された。
仰向けにされた体の上に、小十郎がのしかかってきた。
政宗の首筋に舌を這わせながら、政宗が着ている服を剥いでいく。
直接肌が触れる感触に、全身が震える。
小十郎の指が、唇が触れる場所が甘く疼く。
いつもは政宗を立てて控えめに振る舞う小十郎が、家臣としての建前を捨てて己の欲に正直になる。半ば強引に政宗を扱う、この瞬間が好きだった。
「政宗様……政宗様っ」
「ん……っ、ふ、ぁっ……!」
胸を愛撫していた小十郎が紅く色づいた突起を強く吸い上げた。ビクリと体が跳ねる。
時折うわ言のように政宗の名を呼びながら、小十郎はほとんど無言で、性急に政宗を愛撫する。
下着ごとズボンを剥ぎ取られ、熱を帯びて勃ち上がる中心を口に含まれる。
「あ……あぁっ、んうぅっ!」
強烈な刺激が全身を駆け巡って、抑えられない声がこぼれ落ちる。
小十郎が、政宗の性器を愛しながら後孔をほぐすように指を刺し入れてくる。
気がつけば、政宗は小十郎の髪を指で乱しながら、強請るように腰を押し付けていた。
「政宗様……」
顔を上げた小十郎が、政宗の顔色を窺うように見つめてくる。
一つに繋がりたい。
愛し合いたい。
けれど、政宗の体を気遣って小十郎は強引に進めようとしない。
(変わってねぇな、お前)
政宗は小十郎の左頬に触れて、微笑した。
「Never mind.俺だってお前が欲しい。わかってんだろ?」
「政宗様……」
「Ah, でも初めてだからな。加減しろよ」
「……難しいことを仰る」
政宗の言葉に、小十郎が苦笑した。
そっと、右の瞼に小十郎の唇が触れる。
以前は病に冒されて視力を失い、小十郎が短刀で眼球を抉った醜い傷が残っていた場所に。
そこに触れていいのは、小十郎だけ。
そこへのキスは、承諾の証だった。
「ん……う……はぁっ」
政宗の言葉通り、ゆっくりと小十郎が侵入してくる。
受け入れようとする気持ちとは裏腹に、体が異物の侵入を拒もうとする。
息を吐いて、政宗は小十郎を受け入れやすいようにと努めた。
強烈な圧迫感と異物感が政宗を襲う。
文字通り、身が割かれるような痛み。
だが、それには覚えがある。
小十郎が確かに自分の元に戻ってきたのだという印でもある。
「政宗、様……」
気遣うように呼びかけてくる小十郎に、政宗は気力を振り絞って微笑み返した。
「大丈夫だ。途中で止めるなんて、言うんじゃねぇぞ」
自分の中へと体を進めてくる小十郎の胸に、腹に触れる。意思とは関係なく、生理的に浮かぶ涙で視界が曇る中、この痛みと手に触れる小十郎の温もりだけが、小十郎との確かな絆を政宗に知らしめる。
「小十郎……」
体を繋げる時にはやたら自分に触れたがる政宗の癖を、小十郎もよくわかっている。
呼びかけて肩に触れてきた政宗の意図を、小十郎は確実に受け取った。
「ご辛抱を……」
短く告げて、小十郎は政宗の背中に腕を回して抱き起こした。自分の腿の上に政宗を跨らせて、上半身を密着させるように抱きしめた。
「く……ぅ、ぁ……っ!」
自分の重みで体が沈み、政宗は侵入した小十郎を根元まで呑み込んだ。
耳元で、政宗の浅い呼吸が響く。
艶めかしい色を帯びた吐息に、政宗の中に埋め込んだ自身が本能的に反応する。
「政宗様……」
「こじゅ、ろ……っ」
呼びかけると、舌足らずに自分を呼んで、縋ってくる。
誰よりも愛しい主を再びこの腕に抱ける喜びが、小十郎の全身を包んだ。
小十郎を受け入れた政宗の肉が馴染んできたと見るや、小十郎は緩やかに腰を動かし始めた。
「ぁ……っ、んぅ……ぅっ」
打ちこまれた小十郎の楔が感じる場所をかすめる。
はっきりと当たっているようでもあり、ずれているようでもある。それが酷くもどかしく、政宗は抱きついた小十郎の肩に軽く歯を立てて、腰に回した足に力を入れた。
「小十郎……っ!」
呼びかけた瞬間、体が跳ねた。
「政宗様……ここが、よろしいのですね?」
「あ……あ、あぁ……っ!」
確かめるように、二度、三度と同じ場所を抉られて、ビクリと全身が震える。
痛みを遥かに凌駕する強烈な快楽。
小十郎によって、全てが塗り替えられていく。
「あ……んっ、んぁ……あ――っ!」
「政宗様………政宗様っ」
小十郎の動きが速くなる。
政宗はただ翻弄されて、小十郎に与えられる快楽を貪った。
呼吸が速くなる。
小十郎の動きも。
気がつけば、政宗は再びベッドに押し倒されていた。背中に、シーツが当たる感触がある。
だがそんなことに気を取られたのもほんの一瞬で、政宗はすぐに悦楽の渦に飲み込まれた。
「あぁ……っ、あ、あっ……あ……んぁっ!」
「……ぁっ、く……ぅ、政宗様っ!」
律動に揺さぶられ、ヒクと体が震える。
中にいる小十郎の質量が増して、ピクリと震えるのを感じた、と思ったその時。
感じる場所を深く抉られると同時に、小十郎の腹に性器を擦られた衝撃で、政宗は己を手放した。
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はうぅ、相変わらずエロに入った途端に筆が止まるダメな私でありますorz
これだけのシーンを書くのに、どれだけ時間かかってるんだか。
世間ではもう、バレンタインだというのに(泣)
というワケで、第3章です。ほぼ全部エロです(滝汗;)
というかね、この章。
たまたま、某webラジオで中の人の「脱げよ」というセリフを聴きましてね。
そのあまりのエロさに悶絶致しまして。
言わせてみたいと思ったんですよ、筆頭として片倉さんに向けて!
「脱げよ」って(爆)
……ええ、完全に自己満足です。